前回は床点検口の位置を決める要素として、上階の部屋がどんな種類なのかを考慮する、ということを書きました。
このあたりの話は設計が考えるべきことだとは思いますが…
それでも、躯体図を作図する本人がそういう内容を知っておいて、特に困るような話ではないはずです。
ただ単に設計図通りに建築施工図を作図するのではなく、躯体図にプラスアルファの内容を盛り込む。
これは建築施工図を技術的な面だけでなく、ビジネスとして捉えた時に必要になる考え方です。
そしてそれを実行する為には、今回の内容も押さえておいた方が…ということで、床点検口の位置を決める要素の続きです。


■部屋の種別を考える(続き)
軽く前回のおさらいをしておくと、以下のような部屋が床点検口設置に適さない、という話でしたね。
・女子更衣室などの入室に制限がある部屋
・社長室など、常に人がいるような部屋
今回はその続きと、「だったらどんな場所が良いのか」についても簡単に書いてみたいと思います。

●エントランスホール
エントランスホールは建物のメイン入り口となる為、建物の種類にもよりますが、見映えの良い仕上材を使うことが多いです。
床材で言えば、石だったりタイルだったり。
そんな場所に床点検口を設置するのは、デザインの観点から考えると、ちょっとあり得ない選択ということになります。
床点検口というのは様々なタイプがあります。
良く道路に設置されているマンホールの蓋みたいなものから、床仕上材と同じものを貼れるものまで、色々です。
でもそれがデザイン的にプラスになるかというと、残念ながらそうじゃないので、やはりデザインに凝っている場所に床点検口はNGとなります。
また、エントランスですから人通りの激しい場所である、というのもポイントになってきます。
人通りの激しいエントランスに作業着を着た人がやってきて、おもむろに床点検口を開けてピットに降りてゆく…
まあ問題ないと言えばないですけど、あえてそこに床点検口を設置しなくてもいいんじゃないか、と思います。

●適した場所はどこか?
今までさんざん「ここはNG」とか勝手に書いてきましたが、だったらどこなら問題ないのか、という部分についても書いておきます。
結論から書いてしまうと、常に入ることが出来てなおかつ目立たない場所がベストだと私は考えています。
建物というのは、その用途にもよりますが、通常は「お客さんゾーン」と「スタッフゾーン」に分かれています。
もちろん設計者の表現方法はもっと格好良いでしょうけど、簡単に書くとこんな感じになります。
先ほど書いたエントランスなどはもろにお客さんゾーンで、そういう場所は基本的にあまり適しません。
なので、スタッフが通るような場所で、なおかつ入室制限がない部屋もしくは廊下がベストだと思います。
具体的には「職員用廊下」とか、スタッフゾーン内にある「倉庫」とか「機械室」とかです。
そこなら、男性が入れないとかの問題はないですし、会議中で入れないとかの問題もありません。
また、スタッフゾーンですから、多少床に点検口が見えてもそれほどデザイン的に問題となることもないでしょう。
ということで、もし躯体図を作図する際に床点検口の位置を決める機会があったら、今の話を思い出してみてください。
そしてその考えを設計者に確認すれば、床点検口とメンテナンスルートの問題はほぼ解決となるはずですよ。