建築施工図を作図する為に必要な建築関連の知識、そしてそれを図面化する為に必要なCADの知識と技術。
それらの能力がバランスよく揃えば、建築施工図の技術者としては一人前だと言えるでしょう。
もちろん最初からそんなスキルを備えた人はいませんので、地道に知識とスキルを高めていくしかありません。
ただ、建築関連の知識は奥が深い上に巾も広く、「これで完璧」という終着点はないように思います。
だから何年の経験があっても、常に勉強という姿勢が必要ではないかと、個人的な意見ではありますが、私はいつもそんなことを考えています。
こうして躯体図について解説をしている私も、情けない話ですが、勉強不足が原因で色々な失敗をいまだにやらかしています。
自分では知っているつもりでいるのに、実際には本当の意味で理解出来ていないものが何と多いことか…
その奥深さが良いんですけどね。


■CADはどうか
一方のCADですが、こちらも未経験から勉強を始めるとなかなか難しいところはあると思います。
私も最初に触った時はどうしたら良いのかまったく分からず、線を引くことだけしか出来ませんでした。
実際にCADを操作してみると分かるのですが、線を引くことだけならすぐに出来るんですよね。
線を引くことだけなら。
今はさすがに慣れていますので、鉛筆で躯体図を書くような感覚でCADを使うことが出来ますが、最初はもう酷いものでした。
それでも仕事として使っていき、少しずつ覚えていくしかありません。
CADの機能として用意されていて便利に出来るにも関わらず、自分の知識が不足していて不便なやりかたをしたり。
やりたいことがCADの機能として用意されておらず、やはり不便なやり方をせざるを得なかったり。
CADの機能があって、自分でそれを知っているのに、パソコンのスペックが不足して結局出来なかったり。
まあ色々な失敗とか、「何でこんなこと…」と思うような地味な作業を続けたりして、CADに慣れていった訳です。
ただ、そうした「便利な機能」とかは、初歩的な段階を過ぎたあたりで発生する話です。
基本的な機能としては、線を引いたり消したり文字を書いたり、手で図面を書く時のような機能は一通り用意されています。
難しく感じてしまうかも知れませんが、CADを覚えるのなら、まずはそのステップまで覚えてしまうことをお勧めします。
そこまでは割とスムーズに進むはずですから。

■建築の知識に比べ…
なぜここでCADの話をしたのかというと、建築施工図を作図する為の知識として必要なスキルでは、CADの方が簡単だからです。
最初に書いたように、建築に関する知識は非常に巾が広く、なおかつ奥が深いので、全部を覚えるには膨大な時間がかかります。
もしかしたら引退するまで勉強が続くかも、です。
でも、CADの操作に関する知識と技術は、そこまで奥が深いものではないと私は思っています。
建築施工図をCADで作図する際に求められるのは、最高峰のテクニックという訳ではありません。
線を引く、データを保存する、図面を印刷するなど、ごくごく一般的な操作スキルがあれば支障はない、という感じです。
当然の事ですが、CADのスペシャリストである方が、仕事をする上で優位に立てることは間違いありません。
私もCADに関しては「ややスペシャリスト」ですから、それがどれだけ有利な事なのかは分かっているつもりです。
ただ、建築に関する知識を覚えるのとどちらが簡単かを考えると、間違いなくCADの方が簡単だ、という話です。
なので…
これから建築施工図を仕事にしようと考えている方は、まずはマスターしやすいCADを覚えてしまうことをお勧めします。
どちらもバランス良くが理想ですが、そんな理想的な人材はそうそういる訳ではありません。
であれば、どちらか一方が突出している状態でも、需要としてはあるのではないかと思います。
現実として、CADオペレーターという仕事が存在しますから。