水槽と湧水ピットの床に水勾配は必要か必要ないか、というような話を何回かに分けて説明してきました。
水勾配の表現というのは地味な感じがしますが、実際には非常に重要な要素ですので、躯体図を書く際には忘れずに入れるようにしましょう。
ただ、水勾配と距離からどの程度上がるかを計算し、その数字を躯体図に記入していく…
この作業を繰り返すのは、手間がかかって面倒な作業なんです。
正直なところ私はあまり得意ではなくて、いつも作図の最後のあたりまでやらないことが多いです。
でも、面倒で自分でも「嫌だな…」と思っているような作業は、出来るだけ先にやっておいたほうが良いんです。
後回しにしてもどうせやる作業ですから、それなら先にやったほうが精神的に楽になることは間違いありません。
って言うだけなら簡単なんですが、最近は私もこれを実行していますので、これを読んでいる方もぜひ試してみてください。


■具体的なやり方
「水勾配を入れましょう」という話はしましたが、では実際にどうやって躯体図に水勾配を表現すれば良いのか。
漠然とした話のままで終わってしまうのでは、あまり分かりやすい説明にならないので、ここでもう少し具体的に書いてみます。
躯体図の書き方はこうです、という感じで、1スパンだけですが試しに作図をしてみましょう。
まずは以下のようなピット階の平面があったとします。
躯体図に水勾配を記入-1

釜場に向かって水が流れる訳ですから、ピットの床レベルは釜場から離れるにつれて上がっていく事になります。
また、仮定の話になってしまいますが、設計図の指定でこの水槽の水勾配は1/50だったとします。
そうすると、釜場に向かって1/50の水勾配ということになり、それを図面上で表現するとこんな感じになります。
躯体図に水勾配を記入-2

釜場に向かって床を斜めにしますが、縦方向と横方向で下がる向きが変わり、それが交わる線が上図の斜め線になります。
次に入力するのは、コンクリートの天端レベルです。
水勾配によって床の天端が斜めになるところまでは良いのですが、具体的にはどの程度斜めになるのか。
これを図面に表現をしていく訳です。
どの程度斜めになるのかを躯体図で表現する手段は「コンクリートの天端レベル」になります。
ここで気をつけておきたいのが、水勾配の数値はあくまでも床レベルの結果でしかない、という点。
水勾配の方針を決めるのは設計者であり、さらに厳しい社内基準をもつゼネコンということになります。
ですが、その水勾配を守ると床の天端レベルが幾つになるのか、計算をして躯体図の表現するのは躯体図を書く側の役目なんです。
ということで、まずは平面の距離を測ると、釜場から一番遠い距離まで2450だということが分かりました。
必要な水勾配は1/50ですから、2450×1/50=49で、釜場から一番遠い場所で約50mm上がることになります。
元々のコンクリート天端レベルが1FL-2000ですから、50上げて-1950となり、それを平面に記入していきます。
平面的に釜場から遠い面は2ヶ所ありますが、もう一方の面は釜場まで2225と先程に比べると少し距離は短いです。
距離が短い分だけ少しはレベルを下げることが出来ますが、微妙な差であれば高い方に合わせてしまうことが多いです。
2225×1/50=44.5ですから、5mm程度の違いなら合わせても問題ないはずです。
面ごとにレベルを変えると「どこで段差が出来るのか、それともなだらかに合わせるのか」という問題が出るんですね。
躯体図上ではいくらでも計算は出来ますが、所詮は机上の計算で、実際の現場でその精度を出すのは大変なんです。
だから大幅にコンクリートが増えない限りは、出来るだけ分かりやすい勾配にしておくことをお勧めします。
ということで、躯体図の表現はこんな感じになります。
躯体図に水勾配を記入-3