前回は湧水ピットを取り上げてみましたが、どんな用途で使われるかなんとなくイメージ出来たでしょうか。
基本的に建物の外周にピットがある場合は、間違いなく湧水ピットになっていると考えて大丈夫です。
また、建物の外周にピットがない場合でも、地下で土に接する場所は全て湧水ピットということになります。
要するにピットの外周は土に接する訳ですから、全部が湧水ピットになるということですね。
配管ピットとか、湧水ピットとか、トレンチとか…
設計図に記載されているピットを見ると、恐らく様々な呼び方があるとは思いますが、この考え方だけは変わらないはず。
なので、釜場の位置と連通管や通気管などを意識して、躯体図を書いていくようにしましょう。
もちろん設備と打合せ・調整をやりながら、ですね。


■水槽内の水勾配
地下のピットで水が入る場所として、色々な水槽とか、前回説明した湧水ピットなどを挙げてきました。
今回はピット内の水と非常に関係の深い要素として、床の勾配について考えてみましょう。
水槽も湧水ピットも、ピット内にある水を釜場に集める、という基本的な考え方は変わりません。
そして、水は高いところから低いところに流れる
わざわざ色をつけるまでもない話ではありますが、ピット内の床勾配を考える上で非常に重要なポイントです。
そうした要素があって、湧水ピットや水槽の床には、水を流すための勾配があらかじめ計画されることが多いです。
「多いです」という微妙に逃げ気味な言い回しを使ったのは、床の勾配が水槽と湧水ピットとで少しだけ違う意味を持つから。
水槽には「雨水貯留槽」とか「汚水槽」とか「雑排水槽」とか、様々な種類がありますが、床の勾配は水槽によって決められています。
決められているというのは、一定以上の勾配を設けなければならない、という規定があるということです。
ここで細かい数字は出しませんが、これは水槽の種類によって変わってくる数値で、通常は何分の一などと表記されます。
勾配が緩いところで「1/100」程度、具体的には1mの間に1cm下がるような勾配ですね。
床の上で水を流したいのであれば、緩くてもこの程度の勾配が必要になってきます。
これ以上緩い勾配だと、コンクリートの精度などの絡みもあって、水は床に貯まることになります。
雨水貯留槽など、普通に水を流すような場合には、大抵1/100勾配が指定されることが多いですね。
一方の急な勾配ですが、こちらは「1/30」とか「1/10」程度となり、1mの間に3cmとか10cmとか下がる勾配となります。
汚水槽などは、急な勾配が求められる水槽(水が入る訳ではありませんが…)のひとつです。
もちろん、どの程度の勾配を設ければ良いのか、という部分をこちらで考える必要はありません。
水槽ごとに必要な勾配が設計図に記載されているはずですので、それを守って躯体図を書いていきましょう。
ただ、ここで気をつけておきたい点がひとつ。
設計図に記載された水勾配と、施工側(ゼネコン)の社内規定が食い違っている場合がある、ということです。
これはどちらが優先か、ちょっと悩んでしまいますが…勾配が急な方を採用しておく、というのが一つの方法。
また、現場の担当者に言って、水槽内の水勾配の共通認識を確認しておいてもらう、という方法もあります。
どういうやり方をするにしても、躯体図を書いているこちらに責任がこないよう、何らかの形で確認しておくのがベターですね。
別に責任逃れをしている訳じゃないですよ。
ただ、現場が水勾配不足でやり直しとかになった場合、施工図担当は責任を取ることが出来ないからそうするだけで。
躯体図というのは、実際に施工する前に、設計・施工の両者で出来上がりの形を確認することが出来るツールです。
その利点を存分に生かし、事前に確認出来るところはどんどん確認していくことをお勧めします。
躯体図はその為に存在するのですから。