前回は人通口のサイズと位置について、通ることが出来る最低限の大きさと、構造体に与える影響について考えてみました。
私自身は職業柄、残念ながらピット階に入って人通口をまたぐ機会がなかなかありません。
なので、人通口のサイズについては想像の域を脱出することが出来無い、というのが正直なところです。
よく「実際に行ってみるといいよ」と言われたりするのですが、怪我をすると現場に迷惑がかかるので、ピット階は遠慮しちゃうんですよね。
このあたりの経験不足が、実際に現場作業をしない建築施工図作図者の苦しいところです。
多分これは私だけじゃないはず、なので…
パソコンに向かってずっと建築施工図を作図している人が、突然立ち上がって空中をまたぐような仕草をしたり。
もしそんな状況を見かけたら、「ああ、何か想像しながら作図してるんだな…」と温かい目で見てやってください。
経験していなくっても、建築施工図を作図する側は必死に想像力を駆使しながら作図をしているんです。
もちろん、経験をしているに越したことはありませんけども。


■メンテナンスルートと床点検口
ピット階にある配管のメンテナンスをする為、直上階の床点検口からピット階に入り、人通口を潜ってピット間を移動する。
これがピット階へアクセスする基本的な手段です。
だからこそ、躯体工事の段階で地中梁に穴をあけておく、という割と面倒なことをする訳です。
その際に、メンテナンスルートをしっかりと計画しておく必要がある、みたいなことも書きました。
これはどういうことかというと、目的の場所にたどり着くまでのルートをしっかりと考えておく、ということです。
もう少し具体的に言うと、どの床点検口から入ってどの人通口を通れば目的のピットまで行けるか、というのを検討する訳です。
ちょっと分かりにくいかも知れませんので、ここで極端な例を挙げてみることにすると、こんな感じ。
目的のピットに辿りつけさえすれば良い、という意味では…
例1:全部のピットの上に床点検口を設置する
例2:床点検口を1ヶ所設置し、全部の地中梁に人通口を開けておく
このどちらでも、目的のピットへとアクセスすることは可能、ということに間違いはないはずです。
でもこれは理屈だけの話で、あまり現実的な話ではありません。
例1の場合は、隣のピットに移動したい時、その都度一度上の階に上がる必要があり、非常に不便です。
また、床点検口が多すぎてコストが嵩み、床が点検口だらけになって格好が良くない、と良い部分が全然ありません。
一方、床点検口が1ヶ所の場合は上記の欠点がなくなる訳ですが、行き先によっては目的地までの道のりが非常に遠くなります。
大きな建物で床点検口を1ヶ所とした場合、ちょっと怖くて想像するのも嫌になりますが…
目的の配管にたどり着くまでに、人通口を30ヶ所通過する必要がある、ということになりかねません。
ちょっと行きとは違うところを通ったら、戻ってこれない気がするのは私だけでしょうか。